リストとべーゼンドルファー
19世紀のヨーロッパ社交界最大のスターといえば、「史上
最強のピアニスト」フランツ・リストであろう。彼が「発明した」
ピアノリサイタルはヨーロッパ中の社交界から熱狂的な支持
を集め、リストの演奏を一目見ようと殺到する女性たちの中
から文字どおり失神する者が続出したという。
リストの演奏は超絶技巧を要する激しい打鍵で知られ、彼が
2,3曲演奏すると大抵のピアノは使用できなくなった。
唯一彼の演奏に耐えたのが、ウィーン生まれのべーゼン
ドルファー社製ピアノだったという。その後、べーゼンドル
ファーはリストの名声と共に世界中に知れ渡っていった…
今回の会場、栗東芸術文化会館さきらで使用されるのが
このべーゼンドルファーなのです。実はこのピアノ、激しい
演奏に向くというよりは、「至福のピアニッシモ」…美しい
弱音の響きで知られています。
ウィンナートーン(ウィーンの音色)を忠実に再現するべーゼン
ドルファーを滋賀県を代表するピアニスト南 千勢子さんが
演奏されます。リストを主要なレパートリーとする南さんの
演奏を聴ける幸せを噛みしめながら、至福のピアニッシモに耳を澄ませたい。